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合同会社という選択肢
合同会社という選択肢
会社といえば株式会社が代表格ですが、合同会社という簡易な建付ながら社員は有限責任という形態のものがあります。
合同会社とは
合同会社とは、社員がすべて有限責任のみを負う持分会社です。
持分会社とは、人(社員)の繋がりが強く実質的には民法上の組合に近い集まりに法人格を与えたもの。社員の地位を譲渡するには他の社員の同意が必要であり、同意を得られない場合でも会社に対して買取請求権はありません。
すなわち、小人数(1人でも可)で資本を持ち寄り共同して会社を運営することを原則としますが(ここまでは持分会社全般の特徴)、株式会社と同様に社員(=出資者)の全員が有限責任(会社が倒産状態になっても出資の限度でしか責任を負わない。持分会社にあっては合同会社の特徴)である会社形態です。
有限責任で会社を経営したいが、簡易な運営方法をとりたいというニーズに合致します。
柔軟な運営ができるため、スタートアップ企業やクリエイティブな業界に向いているといわれますが、実際には大企業の子会社や投資ファンドの組織形態として使われている例も多くあります。
合同会社の運営
社員が会社の業務執行を行います。原則として各社員が業務執行権を持ち、会社を代表しますが(業務執行の決定は社員の多数決で決めるが、定款で多数決ではない決め方を定めることができる)、定款で業務執行を行う社員・代表社員を定めることもできます。業務執行者社員・代表社員に法定の任期はありません。
利益の配分
持分会社は社員に利益を配分することができます。社員は原則としていつでも利益配分を求めることができ、配分割合は出資の割合によるのが原則ですが、定款でこれとは異なる定めをすることも可能です(例えば、利益配分をするには社員の持分の過半数による決定が必要だとか、業務執行者社員には配分割合を厚くするなど)。
合同会社は有限責任であるので、利益額を超えて配分をすることはできません。
投下資本の回収/社員の交代
社員は、事業年度の終了のときをもって退社することができます[任意退社](6か月前の予告が必要。ただし、定款で存続期間を定めたときは、任意退社は不可)。また、死亡、破産の場合などは当然に退社となります。定款で退社事由を定めることもできます[以上、法定退社]。退社したときは、持分の払戻を受けます。
他方、新規に出資をして、あるいは社員から持分の譲渡を受けて新たに社員として会社に加わることができますが、社員の構成の変化は定款変更になるので、いずれも総社員の同意が必要となります(譲渡の場合は、定款で別の定めをすることもできる)。
合同会社のメリット・デメリット
メリットとしては、①設立費用が安い(株式会社に比べ設立登記の登録免許税が安く、定款への公証人の認証が不要)、②柔軟な経営体制であること(社員が業務執行の決定をし、株主総会は不要)、③利益配分の自由度が高い(出資額とは異なる−例えば貢献度による−利益配分が可能)、④社員は有限責任でよい、などがあげられます。
他方、デメリットとしては、①「合同会社」に対する社会の認知度が低い、②成長に限度がある(多数の出資者を募る仕組みではないので、会社を大きくしようとするときに制約を生じる⇒株式会社に転換する必要)、③社員の人的な繋がりが強いので対立を生じた場合、運営が行き詰まる恐れがある、などの点があります。